発達障害支援について

総論

●ルピロで行う支援

ルピロにお寄せいただく相談内容として、「発達障害かどうか知りたい」とか、「対応を知りたい」ということが多いのですが、ルピロでは支援内容を考える前に、「何が起きているのか知る」ことを重視しています。そのために過去から現在にかけての経緯に関するお話をうかがわせていただいたり、場合によっては検査などをおこなったりします。このことをアセスメントといいます。

アセスメントで得た内容から相談の本質を想定します。たとえば、「本人の要素が強い問題」なのか、「家族の要素が強い問題なのか」、「関係性の要素が強い問題なのか」、「園や学校会社など、環境の要素が強い問題なのか」などです。

解決のために必要な環境や取り組みは何か考え提案します。ルピロの支援の本質は、「人と人、人と社会資源、社会資源同士をつなぐ」ことですので、ここで保健・医療・障害福祉・保育・教育・労働に関する資源を紹介し、つながりを提案します。


●ルピロが考える子どもの支援(幼児期)

ルピロが考える子どもの支援(幼児期)①

 

ここでもっとも重要なことは、「愛着」です。愛着は保護者と子どもを結ぶ情緒的な絆のことです。愛着は保護者と子どもが「肯定的」で「双方向」のやりとりをすることで育まれ、他者との関係に広がっていくのですが、お子さんに発達障害があったり、特に母親に大きなストレスや産後うつのような疾患があったりすると子育てで困ってしまう状況が生まれますので、愛着関係ができにくくなってしまいます。できるだけ早い段階での母子対応が望まれます

愛着が不安定な子どもの特徴としては、

①人見知りが長く続くなど人間関係に強い不安を持つ

②強い怒りを示しやすい

③人見知りなく誰にでもなついていく 

といったものがあり、これらすべてが愛着の問題だけで説明できる訳ではありませんが、家庭内の葛藤やその後の社会での不適応につながる重要な視点となります。

ルピロでは子どもの問題を個人のものとしてではなく、愛着のような「関係性の問題」として捉え、ニーズを調べていきます。

ルピロが考える子どもの支援(幼児期)②

 

発達的に偏りのある子どもはさまざまな行動上の特徴をあらわします。たとえば落ち着きのなさ、こだわりが強い、偏食のように特定のものごとへの抵抗が強いなどですが、そうしたことがあることで子ども本人は生活のなかでわずらわしさを感じていることが多く、生活スタイルに独特の癖のようなものが生じることがあります。これを「誤学習」と言います。これはたとえば、他の子が使っているものが欲しいときに相手を叩いてしまうとか、嫌いな食べものがあると床に落としてしまうようなこととして表現され、いくら指摘しても改まることがないので、関わる大人が困ってしまうようになります。

 

こうした誤学習を修正するとか誤学習が起きにくいようにしていく活動を「療育」と言い、児童発達支援センターや児童発達支援事業所で提供されています。療育には「親子通園」と「毎日通園」、「幼稚園との並行通園」があり、さらに「小集団」と「個別」に分かれ、子どもの状況に合わせて参加方法を選択していきます。最近では「運動療育」ですとか「感覚統合」、「ソーシャルスキルトレーニング」など、特色のある療育を提供する事業所が増えてきていますので、生活のなかのひとつの選択肢として利用をお考えになってみるのもいいのではないかと思います。


●ルピロが考える子どもの支援(学童期)

ルピロが考える子どもの支援(学童期)①

 

学童期の特徴は、就学です。これまで幼児期には遊び中心の集団活動を行ってきたところから、小学校では教科学習中心の生活へと激変します。さらに集団活動への参加の具合を「評価される」という軸が加わってもきます。当然生活スタイルも変わることになりますので、変化に弱いタイプの子どもは苦戦を強いられてしまうこともありますので、心配のある方は早めに担任と協議の場を持つことをおすすめします。その際、学校に「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」を作成してもらい、そこに保護者の意見も入れ込んでいくようにすると話がスムーズになります。小学校には担任のほか「発達支援コーディネーター」という役割の先生がおりますので、コーディネーターを窓口にしていくとよいでしょう。ルピロでは個別の教育支援計画書などの作成を学校にアドバイスする活動もしています。

ルピロが考える子どもの支援(学童期)②

 

子どもの心理的な特徴として、学年が上がるごとに「複雑性」を帯びてくるようになります。これは悪いことではなく、子どもの心の成長発達の根幹をなすものです。しかし一方で、複雑性が増すことで生じるネガティブな側面として、「いじめ」や「自己評価の低下」、「集団活動の拒否」などが出てくることがあります。いじめは別次元として、自己評価の低下や集団活動の拒否は慢性的な「失敗体験」や「叱られ体験」の積み重ねによって生じてくるものであり、こうした子どもの心理社会的な問題について「二次障害」と言うこともあります。小学生の問題行動で目立つ部分は二次障害の可能性が高いです。

ルピロが考える子どもの支援(学童期)③

 

学業に関して、最近の小学校低学年の話題として、「読みの苦手」が挙げられます。読みが苦手な子は書くことも苦手になりやすいので、教科学習で不適応を起こしやすくなってしまいます。家庭での読み聞かせは有効な対応方法ですが、あまり根(こん)を詰めすぎないようにしましょう。

 

 

ほかの話題として、ルピロには「学習全般が苦手なので学習障害ではないか?」といった相談が多く寄せられます。しかし、全体的な学業不振は学習障害というよりは「知的発達のおくれ(知的障害)」として捉えられるものです。知的発達のおくれは「複雑に考える力の育ちがゆっくりしている」ということですので、学業不振だけでなく、「なんとなく考え方が幼い」とか、「そのときはうなずくが言ったことを理解していない、すぐ忘れる」といったあらわれになります。学業の問題に関しては、「反復してやらせればいい」というやり方ではうまくいかないことも多いので、子どもの発達状況を知能検査などで把握することで理解が進み、対応方法も見つけやすくなっていきます。

ルピロが考える子どもの支援(学童期)④

 

就学先の選択肢として、「通常学級」、「発達支援学級」、「特別支援学校」、「LD等通級指導教室」といった別があります。就学先の選択は居場所の話ですので、そこに入ればすべてが解決するといったことではありませんが、居心地が悪い環境に置いておくだけでは当然心身の伸びに影響があるでしょう。子どもが生き生きと生活できる環境を選択するのが最善かと思います。


●ルピロが考える子どもの支援(思春期・青年期)

 

思春期以降では子どもの思考の複雑さがどんどん増してきますし、社会的に求められるふるまいも高度になってきます。こうした時期の子どもは、自分の内面と対話することが多くなり、その分自己評価が下がりやすくなるものです。そこに発達障害のような特性があると社会的に失敗することが多かったり、学業など個人的な達成にも影響が出てきたりしやすいため、より傷つき体験が増えてしまうこともあります。そうすると、子どもは元々の特性に加えて、「二次障害」という心身の不調をあらわしてきます。気分の不安定さや原因不明の身体の不調などですが、不登校や非行のように行動面の問題をあらわしてくることが多くなるのもこの時期です。また、摂食障害とか強迫性障害のように明確な精神症状をあらわす子どもも出てきます。多くの場合では、「周りをよく見ずに自分だけうまくいっていない感覚」が関係しているのですが、人によっては、「いじめ・パワハラ被害」や「これまでの親子関係の精算」のように、にわかには原因がつかみにくい背景が隠れていることもあります。支援としては、まず大人が子どもの味方になる(安全・安心の提供)ことを通して、低い自己評価を高めていくことが必要になります。そして、子どもにとって次の目標(高校大学への入学や、将来なりたい自分)が見つかること、同じような年齢の他者と関係を作っていくことです。この時期に出てくる問題の解決には時間がかかることが多いので、腰を据えて関わっていく気構えが必要です。

 


●ルピロが考える成人の支援

 ルピロが考える成人の支援①(気づき)

 

ルピロを利用される成人の相談の多くは、「自分が発達障害かどうか?」というものです。「学生時代まではよかったが仕事を始めてからミスが目立つようになった」とか、「部署が変わってからミスが目立つようになった」とか、「結婚してから家事が進まない」などたくさんの相談内容が寄せられます。人によっては、「今まで公私ともにうまくいかなかった自分は発達障害だったのではないか?」というような相談の場合もあります。ここで重要な視点は、「発達障害は脳機能の障害であり、通常その症状が低年齢において発現するもの」という発達障害者支援法上の定義です。つまり、発達障害の症状(特性)は小さなうちから目立つことが多く、大人になってから急に発病するようなものではないということです。もし自分自身が発達障害かもしれないと思われた方、あるいは配偶者など身近な方がそうかもしれないと思われた場合は、小さな頃から特徴的な行動があったかどうかということを振り返っていただけたらと思います。

 

一方で、やはり成人期になってから初めて発達障害の存在に気づくこともあります。人間は大人になるに従い社会的に求められる能力が増えていきますので、学生時代までに学業面では問題なく過ごしてきたけれども就職してから仕事、人間関係、家事、余暇すべてをこなさなければいけない状況でバランスがとれずうまくいかなくなるのです。「人間関係はよかったけれども時間や期日にルーズで信用されなくなってしまった」とか、「仕事の途中で人に話しかけられると混乱してイライラしてしまう」とか、「ちょっとしたミスを指摘されると頭が真っ白になってしまい、かえってミスが増えてしまう」とか、「仕事が終わって家に帰る頃には疲れ果ててしまって家のことがぜんぜんできない」とか、「子どもを育てるようになってうまくいかないことが増えた」などです。ただし、これらのあらわれがすべて発達障害の症状とは限りませんので、相談の場では詳細にお話を伺っていくことになります。(②へ)

ルピロが考える成人の支援②(二次障害)

 

発達障害がある人で同時に併存しやすい心身の不調のことを二次障害といいます。人によっては困難が発達障害そのものよりも二次障害の方が前面に出ていることもよくあるのです。 

社会の中で自分がしたいことや人から求められることがうまくいかないとき、たいていの人はその状況を克服しようとがんばる訳ですが、この力をカウンターパワーといいます。ただ、この力が働いている間でもミスや周りからの叱責などが続けば自己評価は断続的に下がってしまうものです。「自分はダメな人間だ」という感覚もあれば、「自分なんか世の中の役に立たない」という深刻な感覚に陥ることもあります。自己評価の低下は眠りが浅いとか食欲がないとか、身体のあちこちが痛いイライラしやすいなど身体の不調につながりやすく、さらに身体的な不調は人の気分を低下させてしまいます。これらが悪循環を続けるともっと深刻、たとえばうつ病ですとかパニック障害、依存症などにつながっていくため注意が必要です。発達障害があって医療につながる一義的な理由は、この二次障害の治療が必要な場合です。心身が不調なときには一旦発達障害と向き合うことは横に置いておいて、平穏を取り戻すことに時間を使ってもらえればと思います。

ルピロが考える成人の支援③(就職・就業)

 

就職でいちばんつまずきやすいのは、「自分がやりたい仕事と、自分に向いている仕事のミスマッチ」です。これは自分自身の考えが原因になっていることもありますが、職場での配置転換などによって生じることもあります。前にも似たようなことを述べましたが、勤めが長くなるとそれだけ求められる能力が高くなってきます。通常はより管理的な能力を求められることになり、視野の広さ上司や部下との積極的なコミュニケーションなどが必要になってくるでしょう。そうしたときに、現場で黙々と目の前の仕事をするところでは力を発揮できていたのに、立場が変わるとうまくいかなくなったなどの問題がでてくるのです。仕事の面では自分の思い通りにならないことの方が多いものですが、あまりにも自分自身の性質と合っていない環境に長くいると二次障害が出てくることもありますので、自分のキャリアをどのように作っていくかについては積極的に考えておきたいものです。

 

就業面では、この紙面では書ききれないくらいですが、自分の特性を周りに伝えるかどうかということと、就業環境をどのように整えるかということは重要な話題といえます。人に伝えなくても、メモタイマースマホのリマインダー機能をうまく利用するとか、書類の置き場所を固定化するなど自分自身でできる環境整備もあるでしょう。でも、人に分かってもらうことでより快適に仕事ができる状況を作ることもあります。こうした環境整備の種類や効果は人によってまるで違ってきますので、当センターで相談させていただけたらと思います。